昔はライバル、今は同僚。お互いを知っているからこそ高め合いたい。
職員室で隣同士の座席の、原優一先生と熊本大樹先生。なんとお二人は幼い頃から知り合いで、同級生とのこと。今は同僚として一緒に働いているお二人に、同級生対談インタビューを行いました。
お二人の出会い
熊本:いとこの家の隣の隣ぐらいが優一の実家なんだわ。小学4、5年生とかそれくらいのとき。
原:大樹のいとこと仲が良くて、よく遊んでいた。家の近くに集会所があったんだよね。友だちの友だちっていう感じで一緒に遊んでた。ちゃんと認知しだしたのはバスケ。
原:6年生になってからだわ。俺もちゃんと認知したのは。お互いキャプテンだったし。
熊本:試合前じゃんけんするしな。
-その時は敵と言う感じだったんですか?
熊本・原:大敵よ。
熊本:大敵でしかない。
原:6年の1年間で3回試合したんだわ。
俺が西郷ミニバスのキャプテン。大樹が福井ミニバスのキャプテン。
6月に隠岐地区っていう夏の県大会をかけた試合があって。
そこは60対30くらいで西郷が圧勝。それまで西郷のミニバスが強くて、福井のミニバスなんて勝てたことがなかった。もう本当に楽勝だなって感じで勝って。次に8月に公式の試合じゃないんだけど、フジイカップっていうのが隠岐であって、その時は20点差くらいかな。
熊本:でも本当同じくらいボコボコ。
原:次に秋の県大会をかけた試合が10月にあって。まあもう、慢心しきってたわね。負けるわけないと思ってたけど、もう福井ミニバスが完全に別のチームになってて。ずっと接戦。
1点取り1点取られ、1点取り1点取られ…
6月は西郷のミニバスが60点何点取ってたけど、10月は30点しか取れんかったんだわ。
熊本:35対36とかだった気がする。
原:そう。1点差。で、福井が勝ったんだわ。
熊本:そう。最後の最後に。
原:負けちゃってね…。やっぱり、子どもたちの意識の違い。最後は完全に足をすくわれた。こんな展開になるなんて想像してなかったし。
熊本:俺らはそれで負けたら引退なわけだ。そんだけ夏までボロボロに負けちょったけん、勝てるとも正直思ってなかったし、もうこれが引退試合だ、やってきたことをやってみようみたいな。やってみたら勝っちゃって。会場中西郷が勝つもんだと思ってたし。
原:最後の記憶は結構ないもん。ショックすぎて。終わって福井の監督が喜んでたのは覚えてる。それを境に、俺は振り返りをしていた。本当に真っ白になったの。で、俺はそれで引退だね。福井は県大会に進んで。
お互いの印象
原:学校現場で改めて会ったときに感じたのは2つあって。
1つは酒癖悪いなって…(苦笑)まあまあやるなって。
でも、悪いんだけど面白い。俺はそういうの全然好きだから。逆に俺がそういうことしても、全部受け止めてくれるから。そういう一面があるのが一つ。
けど学校では、すごく視野が広いなっていうのが俺の中の印象。
今まで3回体育の行事があって、俺が体育主任で一緒にやってるんだけど、大樹も磯で体育主任やってた経験があるから、俺が言いそびれたってことを子どもたちに言ってくれたりとか。あと、常に冷静。そこが子どもに入りやすい話し方だなって思う。
熊本:最初にすごいなって思ったのは、全隠岐陸上のときの子どもに対する話。優一に直接言ったけど、話がうまいし、伝えたいことがはっきりしているけん、思いがちゃんとある。熱をちゃんと込めて、子ども達に話しているところを見ると、いいなと思って。ちゃんと芯もあって、そういう人に対する柔らかさってところがあってすごいなと思ったのと、多才ってところは自分にはない。ギター弾けるピアノ弾ける何かしら人並み以上にできる器用さがあるから、そこは自分にはないものだし、そういうギターとかで子どもとの関係作りっていう強みを持ってるのかなって。
先生をやっていて楽しいと思うこと
熊本:やっぱり子どもが変わったとき。頑張ってた子が変わって、それが周りに評価されたときを見れるっていうのが楽しいね。それがぼんやり自分の中であったんだわ。
校長先生とこの前話してたけど、それが校長先生の言う「やっか」だなって。努力して、本人が変わって、認められるっていう。自分も大事にしてたんだって言うのが、「やっか」の話を聞いていてそう思った。
原:これって絞るのが難しいんだけど、授業もそうだし休み時間一緒に遊ぶのも楽しいし、一番面白いのは、子どもって素直だなって思える瞬間。
例えばこの間だったら、職員室に「失礼します。原先生に用があってきました。」って入ってきた子がいて、「どうした?」って聞いたら、「トイレ行ってもいいですか。」って。一生懸命やってる姿も見てるし、そういう子どもらしい一面もあるのが楽しいなって。
子どもが帰ってからの時間も好き。俺は職員室が結構好きだから。色んな人に声を掛けてる。
でも、初めて会う人は結構ハードルがあって。例えば、地域に出かけるってときに、初めての人と一緒に考えていくのは苦手だった。最初の一歩はね。でも1回やると、次からはもう知った人だから気楽にできるんだけど。
熊本:職員の異動とかで変わっちゃうじゃん。
原:ドキッとはするね。人見知りかもしれん。最初はね。
けど、本当に初めましてがあんまりいなくて。例えば親が教員とかもあるし、家族の知り合い、知り合いの知り合いとか繋がりがあるから。
教員の難しさ
熊本:大人も色んな考え方の人がいる。子どもをこうしたいとか、働き方をこうしたいとか。地域とどうかかわりたいとか。その人たちとある程度は足並みをそろえていかんといけんわけで。自分がこうしたいとかは言うけど、折り合いをつけないといけん部分もあるけん、色んな人と考え方を合わせていくっていうところは難しいかな。
保護者さんとかもいろんな考えを持っている人がおったり、時代が変わってきて、俺らが子どもの時なんて別の世界じゃん。自分の感覚だけでやってっちゃだめだなっていうところは難しさっていうか、気を付けているところ。子どもも色んな子どもがいる。色んな人がいるっていうところは、意識はしてるかな。
原:時間かな、俺は。時間が足りん!やりたいことあるし、仕事なんだけど、学級に使える時間って本当になくて。子どもがいるときは学級のことを考えているけど、それ以外のことが多すぎて、俺は学級のためにもっと色々準備したりしたいんだけど、それはちょっと後回しになっちゃう。校外的な仕事に時間をとられちゃう。
なりたい教員像
熊本:まず元々教員になろうと思ったのは、父親に憧れてだったんだわ。
俺が子どものときに父親が先生として福井小におって、教師としての父親もすごい好きだったし、周りの先生が父親のことをすごい慕ってる姿とか見ると、自分もなってみたいなと思ったのがきっかけだった。
いざ自分が教員の世界に入ってみると、父の遠さというか凄さに気付いて。生徒指導の人だったんだけど、部屋が指導書とかの本だらけで。
やっぱり子どもと関わる時間が好きだし、問題が起こったときに解決に向かうのに携わる時間が好きだったけん、やっぱり自分も生徒指導で頑張りたいなっていうところはある。でも、そこで父親みたいに本で勉強するのは自分の中では合ってないと思ってて…
じゃあどうすればいいかなって考えた時に、色んな人の話を聞く。仕事の話を本当に若い人から立場年齢関係なく、人の話を聞いて、自分のこうなりたいって言うのが掴めたらいいかなって。だけん、まだはっきりとは決まってない。色んな人の話を聞きながら、こういう先生になりたいっていうのが常に自分の中で変わっていけたらいいかな。こうなりたいっていうのは決めていない。
原:面倒見がいい、子どもに慕われる先生。知識がある先生。知識って言うのは、指導要領のこととか、授業づくりのこととか。今は、こうした方がいいんじゃないのっていうのが自分のやりたいことからしか出てこんくって。例えば解説にこうあるからとか、この資料にこうかいてあるからとかではないんだわ。知識があって、根拠があるアドバイスとかが下の子にできるようになりたいとは思う。
熊本:そっち行くの優一!?そっち行かんでや。
原:今は、そういうポジションにつくつもりはないよ?でも指導主事の先生とかはかっこいいと思う。憧れの先生がいるんだけど、その先生たちの指導助言を聞いたときに、めっちゃかっこいいなって。しかもね、授業者が嫌にならない言い方をするんだわ。ぐさぐさこないけど、ちゃんと指導はされている。45分と指導案を見ただけで指導助言ができるのは、知識がないと出てこないと思う。目指したいなと思うけど、身に付けるまでが大変だわ…
熊本:指導要領からアドバイスしたいのは上のレベルじゃん。俺も多分優一もしてるのは、いかに子どもをのせるか、楽しくやるかっていうところ。
原:楽しいが一番。まじで楽しくないとっていうのが一番にある。
熊本:遊びと言うと言葉がちょっとずれるかもしれんけど、そういう感覚は大事にしてる。楽しみながら気づいたら勉強できてるみたいな。だから、導入に力を入れてる。自分がこうしたいっていうのが俺も優一も強くて、こげやったら楽しいっしょって思ってる時点で授業者はノリノリなわけよ。自分が楽しいことをやる時点で。そこに子どもたちを自然に惹きつけるような、自然にそういう考え方にはなってると思う。
原:まずは、一番最初に楽しみたいのは自分じゃない?楽しいなっていうのを子どもにも味わわせたいなって。
これからやってみたいこと
熊本:好きな事とは絡ませたいね。スポーツとか、カラオケとか、酒とか。今は漠然とで決まってはないんだけど、やるんだったら自分が好きなことと絡ませたい。今もそうしてるつもり。
熊本:バスケット大会を年2回。春秋でやる。
原:おー。俺、大人の島前対抗なんとか大会。前は教員で、バスケやってたらしいからね。面白そうだからって思い付きで言っただけだけど。これをやって何か生産性があるとか考えてない。
ただ面白そうだなと思っただけ。そういう出発やね、俺らは。
熊本:後のことは考えない。やってみる。で、終わったらどうなるか知らん(笑)
原:だからよく言われるんだけど、「これやりたいんですけど。」って言ったときに「なんで?」って。めっちゃ困る。考えてその時は話すけど。
でも根源は、面白そうっていうね。為末さんも言ってたしな、「自分のやりたいことはとことんやれ」って。
さいごに
原:俺は福井小に大樹が来てくれてよかった。
熊本:俺も歓迎会で言ったけど、もうこんなことないから。同級生で、小さい頃はライバルで、でも今は同僚で、しかも今職員室で席が隣で。ここは、いい意味でお互いを知ってるからこそ、高め合いたいなっていう。そういう意味では俺も感謝かな。一緒に働けて幸せです。
執筆者より
昔と今で関わり方は変わっても、お互いを高め合える関係には、まだまだ青春ともいえるような眩しさを感じました。自分がまず楽しむことを大切にしながら、周りを巻き込んでいくお二人。学校を盛り上げていってくださるのが楽しみです!